終了レポート

「その“サーモン”どこからきたの?2023 ~海と日本PROJECT~」

日 程 :
8月5日(土)13:00~15:00
開催場所:
千歳市 サケのふるさと千歳水族館 2階学習室
参加者数:
31名
主 催 :
サケのふるさと千歳水族館
共 催 :
北海道大学大学院水産科学研究院
協 力 :
株式会社ダブリュ・コーポレーション/北々亭 千歳店
目 的 :
サケのふるさと千歳水族館は、北の「海の宝」の代表格である「サケ」を中心とした飼育・展示と「サケ」を通した教育活動を長期間に渡り実施してきています。本イベントでは、同水族館と北海道大学大学院水産科学研究院および回転寿司店を北海道内で展開している企業とが協力し、寿司ネタとしての「サーモン・サケ」に焦点を当て、座学、解剖、調理、試食といった五感で体験する食育により、「海の宝:サーモン・サケ」を理解してもらい次世代を担う若者に「海や水産」への興味や関心を高めてもらうことを目的としました。

イベント内容

 今回は7回目で、今年はコロナ禍前の日程に近い8月上旬の開催となりました。千歳水族館には世界的にも珍しい、川底を観察できる窓が設置されており、海から戻ってきた産卵間近のサケ(シロザケ)を見ることができます。今年は7月17日にシロザケの千歳川への回帰が観察されたそうです。何と、千歳川水中観察窓で初観測された日としては歴代1位の早さです。川の水温が高すぎないか少々心配ですが、もう秋の産卵に備えている姿が健気に見えます。本イベントはコロナ禍を通じてクループ・家族単位での参加に落ち着いてきました。また、認知度が高まったようで、今回は募集開始わずか10分で30名の枠が埋まったと聞き驚きました(当日にあいにく1組のキャンセルがあり、11組31名の参加)。一方で、家族単位での申し込みがあまりにも早く、結果的に中高生グループの参加に至らなかったのは反省点です。イベントは3部構成となっており、サケにまつわるお話し、お寿司用サケ解体実演、およびお寿司握り体験と水族館バックヤードツアーでした。

 菊池館長の司会進行によりスタートし、まず、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの報告者(清水宗敬・本事業実行委員)が、「北海道と世界の“サーモン”」というタイトルで話をしました。今年は例年よりサケにまつわるクイズを多く用意して、より積極的に参加してもらうことを意識した構成にしました。サケの身が赤い(オレンジ)理由を尋ねると、小学2年生の男の子がすぐさま手を挙げて、こちらが説明のために用意していたスライドの内容(エサとなるエビ類に含まれる色素アスタキサンチンが身に移るため)を完璧に答えてくれました。その子のおかげで手を挙げやすい雰囲気になり、続くクイズ(サクラマスの幼魚の体色が川と海で違う訳)でも次々と手を挙げて発言してくれました。その後、色々混乱のある、サケ、マス、サーモンおよびトラウトの呼び名について、北海道のサケ(シロザケ)とヨーロッパのサーモン(タイセイヨウサケ)を中心に説明して整理しました。そして、ノルウェーでフィヨルドを利用したサーモン養殖の成功例を紹介し、大きな生け簀はジェット機も入ってしまうほどの大きさであることを説明すると、会場から驚きの声が挙がりました。一方、大規模養殖で問題となっている養殖魚の生け簀からの逸失の問題についても話をしました。また、最新、北海道大学とノルウェー・ベルゲン大学はサケマス類の持続的な養殖業についての共同教育・研究を推進していることも紹介しました。最後に、北海道はふ化放流事業の維持、野生魚の保護および養殖の導入のバランスを考える上で重要な地域であることを強調して話を終わりました。質問タイムでは、幅広い年齢層から在来のサケマス類、キングサーモンの特徴、養殖魚と野生魚の競合についてなど、多くの質問をいただきました。最後は、小学生の子から「サーモンには色々な種類がいますが食感は違いますか?」という質問が出、プログラムの進行役かと思うほどの絶妙さでした。

集合写真

 次に、北々亭を運営する株式会社ダブリュ・コーポレーションの高尾営業部長と上村さんによるサーモンの解体実演が行われました。これまで、高尾営業部長が軽やかな説明に乗せた鮮やかな包丁捌きで実演していましたが、今年から実演は次世代の上村さんに交代したとのことでした。北々亭千歳店様に準備していただいたお寿司用サケ・サーモン(ノルウェー産タイセイヨウサケ、日高産シロザケ「銀聖」、チリ産トラウトサーモン、白老産養殖ニジマス)がずらりと並んだ横で、大きな魚体が手際よく解体される様子を参加者はとても興味深そうに見学していました。

スライド_ジェット機も入る大きな生簀

サケ解体

 握り体験では参加者を2組に分けて、一組は水族館のバックヤードツアーを先に体験しました。このような分散方式は最初は密集を避けるためでしたが、今ではより効率的な方法として定着しました。いつもより少し大き目に切っていただいたネタでの握り・巻きもの体験も握りブースと巻物ロボットブースを準備し、少人数でじっくりと体験してもらいました。北々亭のスタッフの方々もグループが変わる度に丁寧に指導されていました。試食会では、自分が握った・巻いたお寿司を味比べをしながら美味しそうにほおばっていました。バックヤードツアーでは、普段見ることのない大きな水槽の裏側や水族館を支えるポンプ・機械系統を見学しました。菊池館長が普段展示されないピンチヒッター役の魚もいることを説明すると、参加者は表からは見えない水族館の努力に感心していました。

 今回も千歳水族館のきめ細やかな対策と進行で無事にイベントが実施できました。また、北々亭千歳店は人気店のため、スケジュール調整が難しかったのは容易に想像できましたが、次世代の子供・若者に体験イベントを提供したいという想いでいらっしゃるのが伝わってきました。上述のように、募集開始後10分で参加枠が埋まってしまったため、残念ながら中高生グループの参加はありませんでしたが、会場で海の宝アカデミックコンテストを知り合いの中高生に宣伝してもらえるようお願いをしました。本イベント開催に尽力してくださった千歳水族館と北々亭の皆様に厚く感謝申し上げます

握り体験

軍艦ロボ体験

(伊藤晴留美)

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