終了レポート

「その“サーモン”どこからきたの?2022 ~海と日本PROJECT~」

日 程 :
8月20日(土)13:00~15:00
開催場所:
千歳市 サケのふるさと千歳水族館 2階学習室
参加者数:
24名
主 催 :
サケのふるさと千歳水族館
共 催 :
北海道大学大学院水産科学研究院
協 力 :
株式会社ダブリュ・コーポレーション/北々亭 千歳店
目 的 :
サケのふるさと千歳水族館は、北の「海の宝」の代表格である「サケ」を中心とした飼育・展示と「サケ」を通した教育活動を長期間に渡り実施してきています。本イベントでは、同水族館と北海道大学大学院水産科学研究院および回転寿司店を北海道内で展開している企業とが協力し、寿司ネタとしての「サーモン・サケ」に焦点を当て、座学、解剖、調理、試食といった五感で体験する食育により、「海の宝:サーモン・サケ」を理解してもらい次世代を担う若者に「海や水産」への興味や関心を高めてもらうことを目的としました。

イベント内容

 今回は6回目で、昨年と一昨年は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で10月開催でしたが、今年は調整の結果8月下旬となりました。千歳水族館には世界的にも珍しい、川底を観察できる窓が設置されており、海から戻ってきた産卵間近のサケ(シロザケ)を見ることができます。今年は例外的にシロザケの千歳川への回帰が早く、すでに6,000尾程度の遡上があったそうです。当日はあいにく観察窓にはその姿は確認出来ませんでしたが、来館者は夏にサケが回帰?と驚いているそうです。さて、今回も感染防止のため、参加は個人ではなくグループ単位で8組までとしました。7月から感染が急拡大したので参加者が集まるか懸念されましたが無事に枠は埋まり、リピーターも2組あったとのことで、本イベントが定着していることが伺えました。当日にあいにく2組のキャンセルがあったため、6組24名の参加となりました。グループはすべて家族単位で、3世代での参加もありました。イベントは3部構成となっており、サケにまつわるお話し、お寿司用サケ解体実演、およびお寿司握り体験と水族館バックヤードツアーでした。

 菊池館長の司会進行によりスタートし、まず、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの報告者(清水宗敬・本事業実行委員)が、「北海道と世界の“サーモン”」というタイトルで話をしました。今年は小学校低学年・幼児のお子さんとその父母の組み合わせが多く、子供向けの写真や絵を使ったクイズに時間を取りつつも、大人にもためになる情報を提供できるようメリハリを意識しました。サケ幼魚とイワシの側面・腹側が銀色で背中が黒っぽいのは、海では保護色となるためであることをクイズを交えて説明しました。また、日本におけるサケ・マスの自然分布は九州南部にまで至っていること、また台湾には氷河期以降に取り残されたサクラマスが高山地方にいることを説明すると、大人からも驚きの声が上がっていました。その後、北海道のサケ(シロザケ)とヨーロッパのサーモン(タイセイヨウサケ)の話をして、両者を中心に呼び名などを整理しました。そして、ノルウェーでフィヨルドを利用したサーモン養殖の成功例を紹介する一方、大規模養殖で問題となっている魚の生け簀からの逸失の問題についても話をしました。また、最新のトピックとして、函館でのマスノスケ(キングサーモン)の養殖の試みを紹介しました。最後に、北海道はふ化放流事業の維持、野生魚の保護および養殖の導入のバランスを考える上で重要な地域であることを強調して話を終わりました。質問タイムでは、大人の参加者からふ化放流魚と野生魚の関係についてや、サクラマスの回遊範囲についての質問が出ました。その時には子供からの質問はなかったのですが、イベント終了時に何人かがわざわざ質問しにきてくれて嬉しく思いました。

サケについてのお話

 次に、北々亭を運営する株式会社ダブリュ・コーポレーションの高尾営業部長によるサーモンの解体実演が行われました。北々亭千歳店様に準備していただいたお寿司用サケ・サーモン(ノルウェー産タイセイヨウサケ、日高産シロザケ「銀聖」、チリ産トラウトサーモン、白老産養殖ニジマスおよびアメリカ産イクラ)がずらりと並んだ横で、高尾営業部長による軽やかな説明と包丁さばきがあり、参加者はとても興味深そうに見学していました。参加者のために、「ネタはいつもより大きくね!」と板前さんに仰っていたのが印象的でした。

 そしていよいよ握り体験となりました。参加者の密集を避けるために、2組に分けて、もう一方は水族館のバックヤードツアーを先に体験しました。このような分散方法は2年前から確立されており、時間的にもスムーズに進行しました。いつもより大きいサイズのネタでの握り・巻きもの体験も握りブースと巻物ロボットブースを準備し、密集を避けながらグループで体験してもらいました。北々亭のスタッフの方々もグループが変わる度に丁寧に指導されていました。試食会では、自分が握った・巻いたお寿司を味比べをしながら美味しそうにほおばっていました。バックヤードツアーでは、普段見ることのない大きな水槽の裏側や水族館を裏で支えるポンプ・機械系統を見学しました。こちらも、菊池館長の丁寧な説明に参加者は大きくうなずいていました。冷たい水が流れるパイプが集まった部屋はひんやりとして快適でした。

お寿司の握り体験

軍艦ロボ体験

千歳水族館バックヤードツアー

 開催日が近くなってからの感染拡大で心配していましたが、千歳水族館のきめ細やかな対策と進行で無事にイベントが実施できました。北々亭の皆様も、多忙なスケジュールを何とか調整し、子供達に体験イベントを提供したいという想いでいらっしゃるのが伝わってきました。中高生の参加はあいにくありませんでしたが、小学生・幼児にサケを通して海のことを意識してもらうきっかけになったと思います。本イベント開催に尽力してくださった千歳水族館、北々亭の皆様、ならびにご協力いただいた学芸員研修生とボランティア大学生の方々に厚く感謝申し上げます。

集合写真

(清水宗敬)

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