終了レポート

「海のお宝探検隊 in 下北 -海と日本PROJECT-」

日 程 :
6月6日(水)8:50~16:00
8月21日(火)13:00~14:30
9月12日(水)13:25~15:15
開催場所:
下北半島全域、青森県立大湊高等学校
参加者数:
178名(青森県立大湊高等学校2年生)
引 率 :
教員13名(以下、代表教員)
総合学科部 加藤清美さん、葛西歩美さん
ツアーガイド5名
講 師 :
講師5名(以下)
むつ市教育委員会生涯学習課 坂本朋子さん
東通村役場経営企画課 小笠原格さん
むつ市役所ジオパーク推進課 石川智さん、小池拓矢さん
弘前大学地域戦略研究所食料科学研究部門水産研究室 福田覚さん
主 催 :
一般社団法人しもきたTABIあしすと
共 催 :
北海道大学大学院水産科学研究院
協 力 :
下北ジオパーク推進協議会、弘前大学地域戦略研究所
目 的 :
2016年に認定された下北ジオパークを体験・学習する。具体的には、地域の海に関する課題研究を行い、その成果を「海の宝アカデミックコンテスト2018」に応募する。本イベントでは課題研究のテーマを見つけるために生徒が下北ジオパークの海を中心としたジオサイトを専門ガイドと赴き、海の視点から体験・学習する。また、アドバイザー(講師)を招聘し、意見交換や指導を受けながら課題研究成果をまとめる。

イベント内容

 青森県立大湊高等学校2年生全員が参加する「海のお宝探検隊 in 下北 -海と日本PROJECT-」。お宝の在りかは、下北ジオパークにある16か所のジオサイトのうち、ちぢり浜、斗南ヶ丘、北部海岸、薬研などを除く12か所です。この12か所をA〜E班まで5つのコースに分け、4月18日に生徒を対象にガイダンスを行ったうえで、各自に興味のあるコースを選び、6月6日のジオツアー、つまり“お宝探検”に参加しました。

 マサカリのような形をした下北半島は、大きく分けて、東側は太平洋、北側と西海岸の北半分は津軽海峡、南側と西海岸の南半分は陸奥湾に面し、四方を海に囲まれています。

 大湊高等学校はむつ市内の高台にあり、眼下には、大湊湾に突き出た砂嘴(さし)の「芦崎」が見え、山側を仰げば、下北地域の最高峰で標高878.2メートルの釜臥山(かまふせやま)がそびえています。ジオツアー開催日は、そんな恵まれた景観の地に立つ学校から、5台のバスで各コースへと出発。いずれのコースも車で2時間圏内。近いところでは5分とかからない水源池公園もあります。とはいえ、家族や友だちなどと出かけることはあっても、地元をよく知るガイドさんの案内で見学するのは初めてという生徒が多く、「身近な場所なのに知らなかったことがたくさんあって、面白かったです」という、地元再発見のツアーになったようです。

Aコース:脇野沢・川内(かわうち)コース

 下北地域の南に位置する川内と川内川大滝、その近くの安部城鉱山跡、下北地域南西端にある脇野沢と九艘泊を歩き、海底火山の噴火で生まれ、征夷大将軍坂上田村麻呂との恋が元で自死した娘の伝説が残る鯛島を海岸から見学した。

Bコース:猿ヶ森砂丘・尻屋崎コース

 下北地域の東に位置する猿ヶ森砂丘ではヒバ埋没林、北東端に位置する尻屋崎では、尻屋埼灯台とその周辺に放牧されている「寒立馬(かんだちめ)」という馬を探した。さらに、尻屋崎では拾いコンブやワカメ漁が盛んなことを学び、尻労(しつかり)浜では「キュッキュッ」と音のなる鳴き砂体験や希少な食用野草ハマボウフウの保護・保全の様子を見学した。尻労地区では付加体(プレートどうしがぶつかり、海底の堆積物が削り取られたもの)を知り、地球のダイナミックさに触れた。

Cコース:釜臥山・大湊コース

 釜臥山は下北最高峰で地域の中心部に位置し、その南麓裾野で陸奥湾に面する大湊は大湊高等学校から3キロ圏内にある。さらに、釜臥山展望台、津軽海峡に面した東通村の石持漁港を見学した。

Dコース:大間崎・風間浦コース

 本州最北端のマグロ漁で有名な大間崎、津軽海峡を見下ろすシーサイドキャトルパーク、津軽海峡に面した風間浦村で凝灰角礫岩や産直施設「ふのりちゃん」、大地の隆起で形成された約10万年前の段丘面である蛇浦段丘、下風呂地域では温泉街と活イカ備蓄センターを見学した。

Eコース:仏ヶ浦・佐井コース

 下北地域の西側、津軽海峡沿いの海岸線をバスと船で北上し、仏ヶ浦と願掛岩を見てまわった。国が指定する名勝および天然記念物の仏ヶ浦は、約1500万年前の海底火山の噴火による噴出物により形成した。

 ジオツアー参加者は、これら5つのコースを巡り、それぞれに興味を持ったテーマで「海の宝アカデミックコンテスト2018」に応募する作品を、3~4名1班で制作しました。各班は応募作品を絵コンテ用紙にまとめ、講師による個別添削および8月21日の総合添削を経て作品をブラッシュアップしました。9月12日、大湊高等学校内で「海の宝アカデミックコンテスト 応募前発表会」が行われ、講師としてジオツアーに同行した各市町村のジオパーク担当職員も参加されました。

 発表会はコースごとに5教室で行われ、発表(5分間)後に、担当講師からコメントがあり、発表作品について、各自がワークシートに感想を記載しました。

 50を越える作品の内容は、ワカメやコンブなどの海藻をテーマにしたものがあるかと思えば、大間のクロマグロの魅力を伝えるもの、安部城鉱山(閉山)による環境汚染とその影響を調べたもの、芦崎の旧海軍と釜臥山の関係について掘り下げたものなど百花繚乱。

 写真を多用したり、キャラクターをガイド役に活用したり、それぞれに工夫をこらした作品はどれも、自分たちのテーマを伝えようという気持ちがにじみ出ています。

 「パワーポイントを使ったことがなかったので、ちょっとたいへんだった」という人もいましたが、ジオツアーを通じて「海の宝」を必死で探した様子がうかがえる作品ばかり。

 また、この発表会はプレゼンテーション力も問われます。原稿を片手に、緊張ぎみの声で棒読みする人、演劇部で鍛えた表現力を発揮して、聞き取りやすい声で堂々と発表する人など、さまざまでした。

 約100分間の発表会を終えた人たちの感想を聞いてみると――

 「緊張したけど、言いたいことは言えたかな。講師の先生のアドバイスもあったので、勉強になりました」 田中輝(ひかる)くん

 「鯛島についてまとめました。慣れていないので、パワーポイントの作成時間が足りなかったけど、地元のことを調べて、いろいろなことがわかり面白かったです」 今野志紀(しろき)くん、瀬川 耀太(ようた)くん

 「学校の近くにある水源池や釜臥山が、旧海軍と関係があったなんて知りませんでした。海上自衛隊に入隊したいと思っていて、今回はよい経験になりました」 岩淵由季さん

 「下北半島といっても広いので、自分の家から何時間も離れている仏ヶ浦の成り立ちなどを知る機会はほとんどありませんでした。今回は地域のことを知ることができてよかったです」 向井瀬乃(せな)さん、佐藤月南(るな)さん

 「プレゼンテーションは緊張しました。言葉をかまずに発表できるかどうか、心配でした。結局、かんじゃったけど(笑)。やりきれたという感じがあって、楽しかったです!」大山彩夏(あやな)さん

 参加者からこうした感想があった一方で、講師のひとり、弘前大学地域戦略研究所食料科学研究部門水産研究室の福田覚(さとる)准教授からもこんなコメントが――

 「みなさん、おつかれさまでした。私自身もみなさんの発表を聞きながら勉強になったことがたくさんありました。ありがとうございます。みなさんへのアドバイスですが、せっかく発表するので、元気に堂々としたほうがいいですね。テレビの歌番組なんかでも、元気よく歌っている声を聞くと、ハッと注目しますよね。数分間のプレゼンテーションでも、そういうことが大事です。社会人になると、プレゼンテーションや自分の思いを伝える機会が増えていきます。その時は、表現力が必要になります。アカデミックコンテストの作品を作るだけではなく、伝えることも学んでいただけるといいと思います。」

 ジオサイトツアーから制作、発表会にいたるまでの過程で、ちょっとした青春ドラマを味わった参加者たち。大湊高等学校が総合学習の一環で行っている「海の宝アカデミックコンテスト2018」への応募を通じて、地元の自然や歴史、産業などの“お宝探検”をした経験は、きっと未来へとつながっていくことでしょう。

(佐々木 ゆり)

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