終了レポート

「海をめぐる人と環境 海と日本PROJECT」

日 程 :
7月16日(日)10:00~18:00
開催場所:
㈱紀伊國屋書店札幌本店1階イベントスペース
主 催 :
北海道大学大学院水産科学研究院
後 援 :
北海道、北海道教育委員会、札幌市、札幌市教育委員会、北海道新聞社

 「海の宝をめぐる学びと体験 マリン・ラーニング(海と日本2017)」プロジェクトでは、中学生・高校生・一般市民を対象に、7月16日(日)、「海をめぐる人と環境 海と日本PROJECT」を㈱紀伊國屋書店札幌本店1階イベントスペースにて開催しました。イベントには200名が来場、「海」をテーマとした講演や展示、「海の宝アカデミックコンテスト2017」の紹介などが行われました。

【講義①:山本潤先生「イカだって空を飛ぶ」】

 「イカは魚か否か?」。講義の初め、山本先生から投げかけられた質問に対し、参加者は互いの顔を見合わせました。答えは「軟体動物」。軟体動物の祖先は貝殻をもつ生物であり、イカにもその名残として「軟甲」があります。それでは「イカに心臓は何個あるのか?」。答えは「3つ」。体心臓1つに鰓心臓2つがあるのです。山本先生は、このようなイカの特徴について話をした上で、興味深い行動である「飛行行動」について説明をしました。水面から飛び出し、腕やひれを広げて揚力を発生させ、揚力をコントロールすることで着水する一連の行動は、高度に発達した「飛行行動」です。この行動は、世界中の海で見ることができます。イカの「飛行行動」は水中の敵からの逃避行動である一方、海鳥にとっては、イカ捕食の格好の機会となっているそうです。

【講義②:尼岡邦夫先生「魚のペテン師たち」】

 尼岡先生からは、魚の「擬態」についてお話がありました。擬態には大きく分けて、①「隠蔽的擬態」と②「標識的擬態」の2種5型があります。

 講義では、擬態の様々な手法について、写真を見ながら説明がありました。擬態は、モデルとなる動物の形、色、動作などを似せることで行われます。無害な動物が有害な動物に似せることや、逆に有害な動物が無害な動物に似せることなど、魚たちは餌を捕らえたり、身を守るためなどにいろいろな工夫を凝らしているのです。

【講義③:高瀬克範先生「世界有数の過酷な海と島に生きる~千島の歴史にまなぶ」】

 北海道に近い「千島列島」。そこは人間の生息にとっては、大変過酷な場所です。千島は、食べ物となる動植物の種類や量が圧倒的に少ないほか、低温で日照時間も少ないため、農業にも向かない土地です。また、火山噴火や地震が多く、10年前にもM8クラスの地震と津波に襲われています。このような厳しい土地であっても、人間は生活をしてきたのです。住民は、海の資源(海獣・魚介類・海藻)を利用し、島を転々とすることで、島で持続的に生活することができました。ただ、このような島でも、自然や歴史など魅力的な部分も数多くあるのです。

【講義④:芳村毅先生「海も地球もカゼ気味?!プランクトンを守れ!!」】

 海における「プランクトン」の存在は、海洋生態系の「土台」と言えます。その理由として、プランクトンは、海洋生物の餌となるだけではなく、大気中のCO2を吸収し、減少させる効果があるためです。ただ、昨今の海洋を取り巻く環境の変化は、プランクトンにも大きな影響を与えています。地球の気温は100年間で1.2度、海水温も1.1度上昇しているためです。そして、海中のCO2は増加する一方、pHは低下しています。このような変化は、プランクトンにどのように影響しているのでしょうか?そこで、現在、北海道大学では、附属練習船である「おしょろ丸」、「うしお丸」を使って、海洋上でのプランクトンに係る調査・研究を行っています。

【講義⑤:鈴木幸人先生「海に祈る絵馬」】

 日本国内各地の神社には、海の恵みや航海の安全を祈願して奉納された「船絵馬」や「大型絵馬」があります。ここ北海道でも、小樽・龍徳寺や増毛・厳島神社、礼文島・厳島神社などに素晴らしい「船絵馬」が奉納されています。「船絵馬」自体は、各地に様々な形態(例:弁財船・難船)の作品があり、研究対象としても大変興味を引くものと言えます。

【パネル・写真展示、動画放映】

 会場内では、現在航海中の附属練習船「おしょろ丸」から送られてきた映像や写真の配信・展示が行われました。また、昨年度の「海の宝アカデミックコンテスト」受賞作品の紹介や、今年度コンテストの告知・案内が行われました。

(齊藤 拓男)

トップへ戻る