終了レポート

「海の宝わくわくサイエンスツアー 海と日本PROJECT」

日 程 :
8月8日(火)10:00~16:00
開催場所:
北海道立工業技術センター、函館どつく㈱函館造船所
主 催 :
(公財)函館地域産業振興財団
共 催 :
北海道大学大学院水産科学研究院

 函館地域産業振興財団では、「海の宝をめぐる学びと体験 マリン・ラーニング(海と日本2017)」の事業として、8月8日(火)、北海道立工業技術センターと函館どつく㈱にて、「海の宝わくわくサイエンスツアー 海と日本PROJECT」を開催いたしました。 北海道立工業技術センターでは、平成22年から小学生を対象とした科学教室「わくわくサイエンスツアー」を開催しています。今年度は、北海道大学「海の宝をめぐる学びと体験 マリン・ラーニング」と連携し、中学生まで参加対象を広げ開催しました。

講座開始!子どもたちは少し緊張気味

 今回のイベントでは、小学5年生から中学3年生までの参加者23名が、講義と実験を通じて「浮力」の仕組みについて学ぶと共に、浮力を活かした輸送手段である「船舶」の製造現場を見学、科学理論がどのように私たちの生活に役立っているのかを学び、科学のチカラを体感しました。

 第1部では、立命館宇治高校(京都)の渡辺儀輝教諭が講師を務め、大きな船を浮かべる力「浮力」を学ぶ講義と実験が行われました。渡辺先生は、平成25年3月まで函館市立函館高校に勤務。授業だけではなく、執筆やメディアへの出演、サイエンスショーなどを通じ、青少年に科学技術の面白さや深遠さを伝えています。

 講義は、まず、清涼飲料水が入った缶を、テーブル上に斜めに立たせるデモンストレーションから始まりました。テレビでも紹介されたこの実験ですが、実物を見た参加者たちからは驚きの声が上がりました。この実験は、浮力を考える上で重要となる重力や重心、抗力を考えるのに最適な実験であり、大学教員による研究論文もあります。

サイダー缶が斜めに立っている!

 次に、材質による浮力の違いに関する説明がありました。ボトル本体とふたをそれぞれ、水槽に入れると、ボトルは沈み、ふたは浮きます。これは、ボトルとふたの素材が異なり「比重」が異なるためなのです。

 今度は、油粘土を使った実験です。まず、参加者は各自1kgの油粘土を手でこね、団子状にし水槽の中に入れます。当然、粘土は水槽の底に沈んでいきます。そこで、改めて粘土をこね、船の形にして、再度水槽の中に入れてみます。すると、不思議なことに船は水の上を浮かんでいるのです。浮かべるポイントは、船の床面積。渡辺先生は、床面積を広くし、団子のときよりも水中に入っている部分の体積を大きくすることで、船を浮かべる力「浮力」 が高まることを説明しました。

 その後、渡辺先生が、錘(おもり)や水槽などを使った実験により、浮力の強さや方向などを説明した後、圧力と浮力の関係を学ぶ最後の実験が行われました。

 ペットボトル内を水で満たし、その中に内部に空洞があるガラス製の人形を入れ、ふたを閉めます。最初、人形は浮かんでいるのですが、ペットボトルを左右から押したり戻したりすると、人形は沈んだり浮いたりするのです。ペットボトルを押した際に、押された水が空気を押しつぶして人形に入り込みます。そして、空気によって生まれる「浮力」は小さくなり、また入り込んだ水の分、人形が重くなり沈んでいくのです。

 講義の最後に、渡辺先生からは、自然界の不思議な事象について、自分の頭や手を使って、考え調べることの大切さについてお話がありました。また、渡辺先生は、「調べてわかったことは他者に伝えることで、より理解が深まる」と、コミュニケーションの重要性を強調していました。

粘土の船は浮かぶかな?

渡辺先生の実験に興味津々の子どもたち

そーっと、ガラスの人形をペットボトルに

 昼食後、参加者は、バスで函館どつく㈱にある函館造船所に移動、実際に船を作っている工場を見学しました。函館どつくは1896年創立、造船や艦船の修繕などを行っている企業です。

 まず、函館どつくのスタッフから、造船所の説明や船を作る工程についてスライドを使って30分ほど説明がありました。造船所内見学の注意を受けた後、いよいよ見学となりました。

 東京ドーム6個分の敷地(約28万㎡)にある函館造船所。見学中は、自転車で移動する作業員の姿も多く見られました。工場内では、船舶の主材料となる鉄板の切断作業から、鉄板の加工・組み立て、船舶の塗装などが行われていました。一つ一つの部品が大きく、大規模な作業が行われている光景に、子どもたちは圧倒されながらも、写真の撮影をしていました。また、なかなか普段は見ることができない、海上自衛隊護衛艦の修繕作業には目を丸くしていました。

 参加者たちは、第1部で学んだ知識を基に、実際に船の製作現場や完成間近の大型船を見学することで、浮力に関する理解を深めると共に、科学の面白さやチカラを感じたようでした。

函館どつくスタッフから造船所の説明

ダイナミックな作業風景

船の大きさに目を丸くする子どもたち

 参加した男子中学生は、「長時間でしたが、とても面白かったです。先に船が浮かぶ仕組みを教えてもらったので、今までとは違った目で実際の船造りを見ることができました。漁船やボートなども調べてみたいと思います」と講義・実験と見学がセットとなったイベントの良さについて語ってくれました。また、女子小学生は、「人形を使った実験が面白かったです。家でも試してみて、家族を驚かせたいと思います」と、実験で使った人形を大事そうに持ち帰っていました。

作業中の大型船の前で記念撮影

(齊藤 拓男)

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