イベント内容
「海の宝アカデミックコンテスト2020・海の魅力や課題を考え行動する(海と日本2020)」プロジェクトでは、函館圏の高校・中学・小学高学年生を中心に、「練習船うしお丸のヒ・ミ・ツと水中ドローン体験 -海と日本PROJECT-」を函館市国際・水産海洋総合研究センターおよび、その前岸壁に停泊中の「うしお丸」に於いて実施しました。このイベントは、「北海道大学水産学部附属練習船うしお丸」のドック高架作業を通じて、普段は目にすることのできない海面下の構造を見てもらい、その構造や役割を説明し、簡単な実験やビデオ映像を通じて学ぶことによって、次世代を担う若者に「海」への興味や関心を高めてもらうことを目的に企画されました。
プロジェクトでは、報道機関へのリリースのほか、学校情報のホームページ「JS日本の学校」より、『夏休み特集企画「体験イベント in 大学」』へ情報掲載をおこない、日本各地の学校関係機関に広く案内を行いました。函館圏の高等学校・中学校・小学校等の教育機関や児童組織へのFAX、チラシ、電話での案内を通じて参加者を募った結果、20名の参加者を得ての実施に至りました。函館市内はもちろん、近隣の北斗市、七飯町などに加え、遠くは大阪府からの家族旅行に合わせての参加者が得られました。
イベントは以下のような流れで実施されました。海洋センターに集まって頂いた参加者を、参加者リストを確認しながら受け付けて、実施前アンケートを行いました。その後、センターのホールに集まって頂き、大西広二(おおにし・ひろじ)助教から、本イベントの趣旨説明や目的を紹介し、以前に撮影したうしお丸の高架作業の様子のビデオを上映しました。更に、ドック作業前と作業後の違いを見せて、車の「車検」に当たる船の入渠作業についての紹介を行いました。その後、ドック作業で現れた海面下の特徴的な構造について説明し、簡単な実験などを通じて理解を促しました。具体的に紹介した物は、バルバスバウ、スラスタ、ソナードーム、ビルジキール、電蝕亜鉛、喫水線です。そのうち、ビルジキールに関しては、水槽にキールの有無が異なる2杯の模型船を浮かべて、横揺れ(ローリング)減衰の違いを確かめてもらいました。電蝕亜鉛に関しては、真っ新の電蝕板と腐食した電蝕板を見てもらい、その効果と重要性を認識してもらいました。喫水線に関しては、ゲージの見方と季節や海域によって異なる満載喫水線を紹介し、淡水・海水による浮力の違いを実際の海水塩分値に近い海水と淡水の水槽を用意して、浮力調整した浮(うき)を浮かべて実験を行いました。最後に、冬季大西洋水が最大密度を示すことを足掛かりに、海洋大循環の出発点となることを紹介し、地球をめぐる海洋への関心を高めました。その後、「海の宝アカデミックコンテスト2019」の内容説明に移り、昨年の受賞作品の紹介や各賞の紹介、応募方法や応募に当たっての注意事項などが詳しく説明されました。最後に、本プロジェクトのマスコットとなっている「海坊主」について、海洋の見えないところで発生している「内部波」がその原因と考えられている事をクイズ形式で問い、内部波の実験で理解を促しました。
その後、参加者を2班に分け、1班はセンターホール横の大水槽に展開した水中ドローン(水中カメラロボット)を、コントローラーを用いて操作し、水槽に隠れた魚や真イカを探したり、水槽内から自分たちを撮影したりして、水中のドローンの動きを観察・体験してもらいました。操作をマスターした参加者たちからは、『将来、「深海調査船」に乗ってみたい!』『誰も知らない、深海生物を発見したい!』などの声も聞かれ、子供たちの新しい技術への順応力の早さと海への関心の高まりに期待が寄せられました。
残る1班は、「うしお丸」亀井佳彦(かめい・よしひこ)船長・小林直人(こばやし・なおと)一等航海士・飯田高大(いいだ・たかひろ)二等航海士の案内で、うしお丸の船内・船外の見学を行いました。船外からは、レクチャーで紹介された船体マークや喫水ゲージを確認しました。船内の船橋区画では操舵機・エンジンコントロール機器・レーダー機器などの説明が行われました。実際に舵を握ってもらい、舵輪を切る感覚から舵角が変わるタイミングのずれなどを体験し、操船の難しさなども実感できたようでした。デッキや観測機器室では、海洋観測に使われる機器類やイカ釣りロボットの紹介、ソナー画像の表示なども行われ、興味は尽きない様子でした。ドローン操作の班とうしお丸の見学班を入れ替えて実施し、すべてが終了したのちに、全員がうしお丸の前に集まって記念撮影を行いました。
水中ドローンの操作説明と安全確保には、大学院生の相馬連(そうま・れん)・笛木享(ふえき・とおる)、水産学部生の山崎修介(やまさき・しゅうすけ)の協力、海洋センターの利用にあたっては、函館国際水産・海洋都市推進機構の申東煥(しん・どんふぁん)連携研究員主事のご協力を得た事を付記します。
(大西 広二)