8月6日(日)、函館市のはこだてみらい館を会場に「体験講座 磯焼けってなんだ?どうすりゃいいんだ?~海と日本PROJECT~」が開催されました。中高生以上を対象に、「磯焼け」という身近な海で起こっている環境問題について知ってもらい、それを防ぐためにはどうしたら良いのか一緒に考えてもらうことが、今回の講座の目的です。当日は、磯焼けの現象を模したゲームに楽しく取り組んでもらいながら、学びを深めることのできる「Poseidon」のプログラムに従って進行しました。
「Poseidon」とは、アメリカで開発された「MARE」という海の科学教育プログラムの理論をベースに、日本近海の環境をテーマに作られたオリジナルのプログラムです。楽しみながら効果的にテーマを学ぶことができるよう、組み立てられています。そして、この日のために指導者研修を受けてPoseidonリーダーとなった塩見浩二さんが講師を務めました。また、この講座は「はこだて国際科学祭2017」のイベントのひとつにも位置づけられており、「磯焼け」のテーマに興味を持った中学生から成人までの方々が9名参加されました。
まずは、「磯というのがどんなものなのか、映像を見ながらイメージしてください」と、海藻が揺らめき様々な海の生物がそこにすんでいる様子が映し出されました。そして2人1組のペアになって、磯とはどんなところなのか、砂浜との違い、なぜ様々な生物が生息しているのかなどについて順を追って質問が出され、ペアごとに意見をまとめてもらいました。「磯は砂浜に比べて地盤がしっかりしているから、海藻が生育しやすいのでは?」、「隠れる場所が多いので、生き物が住みかにしやすいんじゃないかな」と、活発に意見が交換されます。
「では、磯焼けが起こる前と後の磯の様子を見てください」と、磯焼け現象が起こる前後の同じ場所の画像を比較。「磯焼け」とは、海藻が根付かなくなってしまった磯の状態を言います。「磯焼け」が起こり、海藻が育たなくなると、そこにすんでいた生き物たちも姿を消してしまうことが分かりました。
後半からは、2つのチームに分かれて「磯焼け」のシミュレーションゲームを行いました。参加者は漁師の立場になって、ブルーシートの海に海藻・ウニ・アワビの3種類のカードを並べていきます。それぞれのカードは、1年ごとの成長のスピードと、捕食や漁獲・除去・放流によって数が増減します。漁獲した場合は、「リテ」という架空の金銭単位で収入が得られ、除去・放流をした場合は費用が支出に。海での時間が5年経つと、地球温暖化の影響を受けて海藻の成長スピードが遅くなるなど、年によってルールも変わっていきます。最初はリーダーの説明を受けながら、15~1年前の海の状況を年ごとに区切って再現しました。すると、環境に配慮した計画的な漁獲を行わなかったため、海では「磯焼け」が起こり、海藻をエサにしていたウニもアワビも姿を消してしまいました。
ここから30分間が与えられ、チームごとに現在の状態から5年後までの漁獲計画を立ててもらうことに。シミュレーションは1年ごとに進められ、環境・人為的な要因と漁師としての収入・支出のバランスを考えながら、ベストだと思われる結果を発表してもらいました。一方のチームでは環境と収益のバランスを重視し、もう一方のチームでは高い収益が得られるような結果にと、各々で傾向が分かれました。
最後に、水産科学博士で海洋環境に詳しい髙原英生さんから「磯焼けの原因には、地球温暖化や漁獲による人為的要因など様々な理由がありますが、海の現状について知ってもらい、その変化を自分ごととしてとらえてもらえたら」という話がありました。
大阪から親子で参加していた中学2年生は「以前塾で磯焼けについて学習したことがあったので、より知識を深められたらと思って来ました。塾では『ウニがコンブを食べてしまうから』という説明だけだったので、地球温暖化も関係していることが分かってよかったです」と感想を語ってくれました。また、遠方から磯焼けに興味を持って参加された教育関係者の方もおられ、「積丹の小学校で、子どもたちに磯焼けの話を教えることがあります。今日のようにゲームを使って分かりやすく伝えることができたら」、「水に関する環境教育に興味を持ってきました。北見の海は砂浜が多く、磯焼けについてはあまり知識がなかったので勉強になりました」と、有意義な学びのある講座となったようです。
(鈴木せいら)