マリン・ラーニング

【イベント終了レポート】

2016 Miho Cup 7 th &パドルボードで海の宝ものをさがそう 海と日本プロジェクト
幼児からシニアまで誰でも楽々スイスイ
人気上昇中のSUPに挑戦

開催日
2016.08.06(土)~07(日)
会 場
静岡県静岡市清水区三保内浜海岸
主 催
三保水中生物研究会

介護予防にパドルボードをシニアにすすめる自治体も!

 2014年1月、千葉県市川市の雷下(かみなりした)遺跡から7500年前の丸木舟が発見されました。これは国内最古のものだそうで、当時の海の民には、食料の確保や移動に欠かせない道具だったのでしょう。

昨年より参加者が増えた「2016 Miho Cup 7th」。

 さて、それから7500年後。場所は、静岡県清水区の三保海水浴場。日本三大松原の「三保の松原」から2キロほど離れた内海にあります。対岸には工場やアミューズメント施設、そして、清水港に出入りする貨物船。対岸との距離は水上バスで15分ほど。8月6日、その水上バスが行き交う海に、パドルボードを漕ぐ一団があらわれました。今年で7回目を迎えたパドルボードの大会「Miho Cup」が開催されたのです。

 パドルボードは、スタンドアップパドルボードともいい、英語表記のStand Up Paddleboardから、略して「SUP(サップ)」。ボードの上に立ち、パドル(オール)を使って漕ぎ、海や湖、川などの水面を移動するウォータースポーツです。

パドルボード一式。

 現在は、専用ボードを使うのが一般的ですが、1960年代にハワイで広がりはじめた頃は、サーフボードが使われていたとか。全長約270cm、幅は70〜80cm。サーフィンのように波に乗ることもできれば、カヌーのようにクルージングも楽しめ、なかには、釣りのボート代りに利用する人もいるとか。日本では10数年前から注目されるようになり、静岡県下田市のように60、70代のシニアを対象に教室を開き、介護予防に役立てようという取り組みもはじまっています。 

 でも、なぜ介護予防なのか?

 「ボードの上に立つので、からだは無意識のうちにバランスをとろうとします。それで、インナーマッスルや足腰の筋肉が鍛えられるんです」と、三保水中生物研究会の代表で、東海大学海洋学部の講師でもある鉄多加志(てつ・たかし)先生。パドルボードを試乗体験する今回のイベントで、鉄先生は参加者の指導と安全管理を担当。大学では、海洋スポーツの指導や安全管理を専門とし、地元の静岡県でマリンスポーツの普及にも努めてきたベテランです。

 「パドルボードでは、バランスをくずすと海に落ちてしまう。体幹の左右のバランスをとるためには、ヨガが効果的ということで、今日も大会がはじまる前に、ヨガをやっていた人たちがいます」

 ボードから海に落っこちる・・。泳げない人には危険なのでは?

 「ライフジャケットを着けているし、片方の足首とボードをリーシュコードでつないでいるので、もし、落ちても、ボードにつかまれば溺れることはありません。でも、自然が相手のスポーツですから、泳ぎに自信のある人もライフジャケットは使ったほうがいいですね」

 こう話す鉄先生もライフジャケットを装着。そして、ボードとパドルを抱えて、いざ海へ。

 「ハイ、最初はボードに利き足をのっけて、足首にリーシュコードをつないでください」

 アドバイスに従って、片足立ちで右足だけボードへ。リーシュコードはワンタッチで装着できるので、ここまでは意外に簡単。

 「リーシュコードをつないだら、ボードに乗って正座してください」

 ボードに両手をついて下半身を持ち上げ、よっこらしょ。これもOK。木の葉のように、ゆらゆらと浮いている感じがなんともいえず心地よい。

 「では、膝立ちして、漕いでみましょう!」

 パドルは1本しかないので、左右持ち替えながら漕ぐと直進。ターンしたいときは、曲がりたい方向の反対側にパドルを持ち替えて漕ぐ。そしてまた、前進。海面を滑るように進み、これはオモシロイ!!

 「では、今度は立ち上がってみましょう」

 5分ほどオールの使い方を練習したのち、いよいよパドルボードの基本スタイルに挑戦。パドルを握りしめたまま腰を浮かせたところで、ボードが左右に揺れはじめました。両膝に力を入れて立ち上がろうにも、日頃の運動不足がたたり、腿に力が入りません。「えーい、一気に立ち上がってしまえ」と思った瞬間、ゴボゴボゴボと海中へ。時間の都合で体験取材はここまで。う〜む、残念。鉄先生によると、これを何度かくり返しているうちに、コツをつかんで、大会参加者たちのように、2kmでも3kmでもスイスイと移動できるようになるそうです。

子どももおとなも海を満喫

 「パドルボードの試乗体験会をおこなっているのですが、参加しませんか?」

 波打ちぎわで遊んでいた少年とお母さんに声をかけると、「やりたい!」と即座に元気のよい返事がかえってきました。少年は小学5年生。ところが、お母さんがギョッとした表情を浮かべています。「あのぉ、この子、今日が生まれて初めての海水浴なんですけど・・」

 聞けば、山梨県在住とのこと。少年は「ぼく、やってみたい!」と母親を説きふせ、鉄先生の説明を受けると、さっそく、ボードの上で膝立ち。パドリングをマスターすると、苦もなくボードの上で立ち上がり、鉄先生と並んで沖へと漕ぎだしました。30分ほどのクルージングを楽しみ、戻ってきた少年は「面白かったぁ、また、やりたい!」といかにも楽しそう。初めての海水浴で、「海の魅力」という一生の宝ものを見つけたようです。

4歳の子も挑戦(写真右端)。子どもは上達が早い。

 この少年の試乗を皮切りに、翌7日は朝からおおぜいの参加希望者が集まり、なかには4歳の男の子も!?  今回の試乗体験会では、鉄先生のもとで学んだ東海大学海洋学部の学生たちが、マンツーマンでつきます。男の子はボードに乗せてもらい、波打ちぎわで浮いているだけでしたが、いつまでもボードからおりようとしません。そばで写真を撮っていた両親も、これには苦笑い。さらに、この日は東京、神奈川、埼玉などから訪れた大人も多数参加。なかには、ライフジャケットが小さく見えるほど体格のよいお父さんもいましたが、ボードは沈むことなくスイスイと海面を滑り、どの参加者も童心に帰り、無邪気な笑顔を浮かべていました。

 「本格的にやりたいな〜、でも、オレたち山梨だしなあ」という若者2人組もいましたが、湖や川でも遊べるのがパドルボードの魅力。しかも、筋力アップだけではなく、楽しいと思えることで、心の疲労回復にも役立つはずです。筋力がつくと基礎代謝が上がるので、最近ではダイエットのためにパドルボードをはじめる人もいるとか。ダイエットで生活習慣病を予防できれば、それもまた、海から贈られた宝もの。全国の海水浴場に、カラフルなボードが並ぶ日は、そう遠くないかもしれません。

トップへ戻る