マリン・ラーニング

【イベント終了レポート】

函館マリンフェスティバル 2016 「海と日本プロジェクト」
楽しくておいしい函館の海
“海”づくしのイベントに5000人が参加!!

開催日
2016.07.23(土)~24(日)
会 場
函館市国際水産・海洋総合研究センター
緑の島時計台広場
主 催
(一財)函館国際水産・海洋都市推進機構、函館市

コンブではじまった函館の歴史

 室町時代、本州から渡ってきた和人が住み着いたころ、「宇須岸(うすけし)」と呼ばれていた函館。その歴史は、はるか縄文時代にまでさかのぼり、函館駅から車で1時間ほどの海沿いにある旧南茅部町では、宇宙人を思わせる中空土偶が発掘され、海岸近くに有る函館空港の滑走路周辺からも縄文時代の集落跡が発見されています。どちらもマコンブとガゴメの産地。残念ながら縄文人がコンブを食べていた証拠は発見されていませんが、滑走路に近い志海苔(しのり)地区の目の前は、室町時代に「宇賀昆布」の名で本州に流通したマコンブの産地。地名を「宇賀浦」といいます。

 その後、江戸時代になると、箱館港(以前の表記)には、北前船が寄港するようになります。この船にはコンブやニシンなどが積み込まれました。一方で、幕末にはフランスやロシアなど外国船が寄港するようになり、防備のために幕末に造った弁天台場は、明治時代になると解体されて、その石が函館漁港(通称:入船漁港)の建設に使われました。

開催挨拶をする北海道大学大学院水産科学研究院長の安井肇教授。

 今回のイベント会場は、この港から歩いて15分ほどの場所です。1か所はレンガ倉庫群の近くにある埋立地の「緑の島」。もう1か所は、2014年にマリン・サイエンスの拠点としてオープンした函館市国際水産・海洋総合研究センター。研究センターは、明治29(1896)年創業の造船所「函館どつく」の前にあり、岸壁には北海道大学水産学部の附属練習船「おしょろ丸」と「うしお丸」が停泊。数キロ先の対岸には函館フェリーターミナルがあり、函館港を一望できる函館観光の穴場です。

 現在、人口およそ26万6000人の函館市は、国連海洋法条約により函館経済の要だった北洋漁業が打撃を受けて以来、観光都市へとシフト。その過程で、日常的に食べられていたイカが観光資源として注目を集め、十数年ほど前からは、新たな特産品として、ガゴメが登場しました。

 ガゴメは、表面にかご状の凹凸があることから、売り物にはならないといわれ、以前は漁業関係者に見向きもされなかったコンブです。そんな“みにくいアヒルの子”に、北大水産学部の海藻学者と若きコンブ漁師が注目。やがて水産加工業者、港湾事業者、函館市や北海道立工業技術センター、公立はこだて未来大学など産官学が連携。水産業の衰退を食い止めたいと、勉強会や異業種交流会を重ね、街ぐるみで育てられた食品です。あれから15年。いま、和食が世界的にブームとなるなか、その基本ともいえるコンブだしが改めて注目されています。函館の不動の財産ともいえるコンブに、世界の目が向けられるのも遠いことではないでしょう。海は、まさに函館の宝もの。そして、今回のマリンフェスティバルの賑わいが、函館と海の深いつながりを象徴しているように見えました。

夏はやっぱり潮風が最高!!

実験や料理(イカ飯)も体験。
実験用水槽にはアジやサバが放され、水中TVカメラで遊泳を追う。

 今回のフェスティバルはイベントが盛りだくさん。市の中心部に近い「緑の島」では、ヨット、シーカヤック、ジェットスキーなどの試乗、プロレーサーによるジェットスキーショー、イカ飯作り体験、イカスミ絵描き、海藻万華鏡作り、がごめ昆布試食などがおこなわれました。この7月、函館地方は「えぞ梅雨」と呼ばれる長雨に悩まされ、加えてこの時期に発生する海霧の影響で、フェスティバル初日は曇天。2日目は晴れたものの、午後から風が強まったため、緑の島では予定を一部変更して早めの閉会となってしまいましたが、あちこちから歓声が上がり、なかでも空中回転の技を披露するジェットスキーショーは、めったに見られないとあって、岸壁には見物客がずら〜り。一方、研究センターでは、イカをモチーフにしたアート作品を数多く制作してきたミネソタ大学美術部の中島隆太准教授の講演会、サイエンスカフェ、ウニやヒトデなど身近な海の生き物に触れられる「タッチプール」、「函館みなとパネル展」、漁業取締船など官庁船4隻の見学航海に加え、17日から継続中の「北の魚の赤ちゃんと海藻の世界」展と、2回目となる水槽バックヤードツアーもおこなわれました。2日間で2会場に集まった市民は延べ5000名。「子どもがタッチプールを喜ぶから」といった声もあれば、「いろいろ楽しめそうだから」といった声もあり、参加動機はさまざまです。

 そんななか、函館水産高校ボート部の部員たちがヨットやカヌーの乗船をサポートするなどボランティアに精を出す姿も。イベント初日に開催されたカヌーレースでは、「出場したいけど、俺たちが出たら勝っちゃうしなあ」と苦笑い。カヌーレースの出場者は、60代になって初めてカヌーを体験したという女性出場者もいるなどシニア世代がほとんど。函館水産高校ボート部は、この秋開催される国体に出場するほど道内の高校で1、2を争うチーム。今回は毎日の練習を返上して、海の魅力を伝えるために、朝早くから会場に来て準備を手伝い、裏方に徹することにしたそうです。

 海好き市民たちの手による海のイベントは事故もなく大成功。海洋都市を標ぼうする函館は、市民パワーで全国に海の魅力を発信しつづけていくことでしょう。

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